北陸の冬が来た。
正確には、もうずっと来ているから「来た」だとちょっと遅い感じがする。
日本語って難しい。
「来た」は過去形でもあり、かぎりなく現在形に近い感じ。
今来たところみたいな。
そんなことはどうだっていい。

わたしの母は新潟県出身で、母が生まれた家には祖父母を尋ねて幼い頃によく遊びに行っていた。
それはもう雪深い地域なので、うっかりすると家ごと雪に埋まってしまうような場所だった。
母はよく、田舎も雪もうんざりだと話していた。
だから大人になって、まさか娘の私が雪国に住むことになるだなんて。一番驚いているのは母だと思う。
雪とは縁遠い街で育った私には、山や田んぼや広い空はなかなか見られない貴重な景色で、東京よりもずっと好きだ。それはきっと祖父母の家が好きだったせいだろう。
雪国の冬は静かでいい。
東京は色々な音がしていて、ずっと明るくて、どこにだって人がいる。
それは安心な部分もあるけれど、やっぱりどこか消耗するかんじがする。

すっかり日が暮れた頃に古城公園へ。
射水神社を参拝して、公園内を歩いてみる。気がつくと雪がかなり降っていた。
降りしきる雪の中、カメラもわたしも全部濡れながら写真や動画を撮る。
バサっと雪が落ちる音がする。
ぎゃー!と鳥が鳴く声がする。
わたしだけが、ちょっと「ビクッ」とする。
誰もいない音がする。

雪は「しんしん」と降ると言うけれど、このオノマトペを考えた人は誰なのだろう?

凍える指でカメラのレンズを動かしながら、本当に雪はしんしんと降っているのだと知る。
冬はしずかな音がする。
Comments